2015年9月7日月曜日

Day 16 デリバリーの行方

 トニーは今日、「デリバリーピザと間違って、デリヘルを頼んだ男」という本を読んだ。まさかそんな馬鹿な話はないだろうと思いながらも、トニーは最後まで一気に読んでしまった。
 要約すると、次のような話だ。急にピザが食べたくなった著者が電話をかけようとしたところ、番号を間違えたのかデリヘルにつながってしまい、しょうがないからそのままオーダーした。やって来たデリ嬢が著者の元クラスメートで、昔話で大いに盛り上がり、時間が来てしまいエッチができなかったという。その後、著者がこのデリ嬢から教えてもらった電話番号に電話をかけてみたところ、名も知らないピザ屋につながった。著者はやや困惑したが、この前にピザを食べ逃して散々な目にあった日を取り返そうとピザをオーダーした。
 ピザを届けに来た人がインターフォンを鳴らすと、そこにはあのデリヘル嬢、いや、元クラスメートがピザを持って立っていた。
 著者が中に迎え入れて一緒にピザを食べた。すると、嬢がためらいながら言った、「実は…私、ピザ屋のバイトと、デリヘル嬢を掛け持ちして、デリバリーの専門誌を発行してるの。私、編集長なの」。
 それを聞いた著者は、その専門誌のコラムに寄稿し始めた。その後、その専門誌は爆発的な人気となり、最終的にはイギリスの有名経済誌に数十億円で買収された。
 
 トニーはこの興味深い本をフトニーにも読ませてあげようと思って、フトニーの家にタクシーで向かった。


「おっ、トニー? どうした?」
「この本、すげぇ~面白いんだけど、読んでみて」
「ごめんごめん。それ、読んだことあるんだ」
「マジで?」
「マジで。しかも、その話には続きがあって…」
フトニーはトニーを部屋に上げると、部屋にはトニーの知らない女性がいた。濃いめの化粧をした女性はピザを食べながら、トニーに軽く会釈をした。
 フトニーはトニーにもピザを食べるように促し、微妙な空気で三人でピザを食べながら話を続けた。どうやらその女性はフトニーの彼女ではないらしいが、トニーは空気を読んで、あまりそこに突っ込むのは止めた。すると、ピザを食べながらフトニーが恥ずかしそうに言った、「その本の印税は、しっかりと貯金したぞ」。

 隠し事の多い、不思議な存在のフトニーだが、トニーはこれには驚いた。だが、豪華な額縁に入れて、部屋のテーブルに置いてあった賞には敬意を抱いた。
『芥木直川賞』。
10年に一度、しかも毎回一人しか受賞できないという、最高級の文学賞と言われている賞だ。
 トニーはフトニーとその女性のために敬意を表して、額縁に入った賞をバックに、フトニーとその女性の写真を撮りたいと申し出た。カメラを持つトニーの手は、興奮からか少し震えていた。その震えを必死に抑えながら、トニーは二人に向かって言った、「はい、チーズ」。

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